「やがて君になる」仲谷鳰

あらすじ

小糸侑(こいと ゆう)は、自分が誰にも「特別」な気持ちを抱けないことが少しコンプレックス。ある日侑は、誰にも恋愛感情を抱けないという上級生・七海燈子(ななみ とうこ)と出会います。燈子はよく告白を受けるものの、すべて断っているといいます。侑は思いきって燈子に悩みを相談しますが、燈子はそんな侑を好きになってしまい……?

やがて君になる(1) (電撃コミックスNEXT)

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仲谷 鳰
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みどころ

誰にも「特別」を感じることができない女の子・侑が主人公の物語。 侑と同様かと思われたヒロイン・燈子が侑を好きになってしまうことからストーリーが動き始めます。

侑×燈子

燈子から侑への複雑ながらも強い愛情がみどころです。誰のことも好きになれないと言っていたはずの燈子ですが、侑に対しては出会った当初からかなり強い興味を見せています。そのアプローチは次第にエスカレートしていき、ほとんど恋人のようなことをするほどに。

一方、侑のほうはやはり燈子に対しても「特別」は感じていないようです。燈子からのアプローチについては、当初は困惑していたものの、興味がないわけではないらしく受け入れています。事実上相思相愛にも見えますが、燈子は侑に対し、自分を好きにならないでと要求。ここから、ほとんど恋人のような距離感なのに好きになってはいけないという奇妙な関係へと発展していきます。

燈子の身勝手かつ矛盾しているようにも見える言動には、亡き姉が関わっています。 誰からも慕われる完璧な自分を演じているのも、すべては姉が理由。この点に関しては燈子はかたくなで、たとえ侑の言葉であってもほとんど耳を貸さないほどです。

沙弥香

燈子の親友である沙弥香は、燈子に片思いしています。しかしあえて口には出さず、そばで見守っていたいと考えているようです。 しかし侑の登場によって燈子に変化が表れたことから、沙弥香も動き始めます。

実は沙弥香は中学時代に女の子の先輩と付き合っていました。 沙弥香の現在の性格に影響を与えた出来事として、回想シーンで軽く触れられています。このあたりは、のちにスピンオフ小説「佐伯沙弥香について」にて詳しく語られることとなりました。

理子×都

生徒会の顧問を務める理子(箱崎先生)と、学校の近くの喫茶店の店長である都(みやこ)は恋人同士。 現在同棲していますが、基本的に周囲には内緒のよう。ですが都は、沙弥香に対しては自身の事情を明かしたうえで相談に乗ってくれるという場面がありました。

のちに理子と都の回想で、2人の馴れ初めも描かれました。ここは社会人百合としても楽しめるパートとなっています。

アンソロジー

公式のコミックアンソロジーが2冊リリースされています。1巻目は2018年ということで原作連載中、2巻目は2020年ということで原作終了後のリリース。

柊ゆたかさん(新米姉妹のふたりごはん)、缶乃さん(あの娘にキスと白百合を)、原百合子さん(繭、纏う)など、さすがKADOKAWAという感じの豪華な作家陣となっています。また、2巻目には原作者の仲谷鳰さんによる描きおろしもあり。

内容は、原作ではありえないようなギャグ路線から、原作の合間にあったかもしれないショートエピソードまで、バラエティに富んでいます。ファンにはおすすめのアンソロジーです。

アニメ版

TVアニメ版が2018年に放送されました。

  • 小糸侑:高田憂希
  • 七海燈子:寿美菜子
  • 佐伯沙弥香:茅野愛衣

原作のストーリーを非常に丁寧に映像化しています。最終回は、水族館のエピソード(原作でいう第5巻の前半あたり)。原作通りにストーリーを再現し、ちょうど尺が尽きたところで完結としたような印象です。賛否ありそうですが、無理にオリジナル展開で締めるよりは、このような原作重視も良いのではないかと思います。

英語版

原作漫画・アニメともに英語版が発売されています。

英語版・漫画

百合漫画の英訳版の最大手と思われる、Seven Seasからの発売。原作の最後まで英語版が出ているので、最初から最後まで通して英語で楽しみたいならこの漫画版が唯一の選択肢となります。

おおむね言語に忠実ですが、主語の取り違えなどの初歩的なミスがやや目立ちます。また、沙弥香の名前をSanaeと何度も間違えるという謎のミスがありました。電子書籍化の際に修正されています。

「Senpai」のように日本語をそのままローマ字にした表記した部分がありますが、これは日本の漫画の英訳版では一般的な表記です。英語ではぴったりなニュアンスの言葉がないので、無理に変えるくらいならそのまま使おうという配慮かと思われます。

英語版・アニメ

TVアニメの国内放送から約1年後に、英語版のBlu-rayがリリースされています。

英語は吹き替えと字幕があり。どちらも微妙に内容が違い、字幕は言語に忠実、吹き替えは英語として自然な内容にややアレンジが入っている印象です。

例えば、第1話の台詞は以下のように英訳されています。

「だって私、君のこと好きになりそう」

字幕:I think I’m falling in love with you.

吹き替え:I think I’m finally feeling it now.

この台詞は原作漫画などにもあるので、いろいろな媒体の翻訳を比べてみるのも面白いと思います。「やがて君になる」自体、言葉の裏に込められた意味がとても多い作品です。タイトルからして人によって解釈が分かれそうなほど。それぞれの翻訳者がどのように解釈したのか考えながら楽しむのも良いですね。