中国の正統派学園百合「LINGHUA YURI SERIES」

作品概要

中国の開発者「White Dew Games(白露社)」による王道学園百合シリーズ。中国南部のお嬢様学校を舞台に、女の子達の恋を描きます。舞台の学校では花や植物に関する教育が盛んという設定があり、温室が主な舞台の1つとして登場します。また、花言葉などがストーリーに積極的に関わっています。

全四部作構想であり、2022年春時点で「Symbiotic Love」「Melancholy Love」の2作が発表済。また、外伝的な短編「夜永」「秘密舞会」もいくつかリリースされています。

公式では、舞台となる学校の名前を取って「LINGHUA YURI SERIES」と呼ばれています。全四作構想、花にまつわるストーリー、一部演出などから、「FLOWERS」のオマージュ的な要素も見受けられます。特に温室での「だって、友達じゃない」(意訳)という台詞からは強いリスペクトを感じます。

Steam:Linghua Yuri Series
中国版学園百合ゲー

中国が舞台ということで、地名や普段食べている料理などに中国らしさがよく表れています。ですがそれ以外はほと日本の女子校ものと変わらず、海外のゲームとしては非常に親しみやすい世界観だと思います。ときおりmatchやwasabi、アニメ作品といった日本文化へのやや偏った言及があるのはご愛敬。「日本の高校生の間で人気らしい」といってポッキーゲームに挑戦する謎のシーンもあります。

なお販売形式は、主にSteamなどでのダウンロード販売となっています。

対応言語

もともと中国語のみに対応していましたが、後に順次英語版がリリースされています。英語の出来はとても良く、Steamにあるもともと英語のゲームと比べてもまったく違和感なく読むことができると思います。英語がわかる人、英語を勉強している人におすすめ。日本語には対応していないようですが、今後の展開に期待。

ちなみに中国語版と英語版はSteam上では別作品扱いになっています。1つ購入すれば複数の言語を切り替えできるSteamの一般的な仕様とは異なるので注意。

Symbiotic Love

シリーズ1作目。最初ということを意識してか、王道の入り込みやすいストーリーとなっています。

主人公は、Jisuoという平凡な女の子。ヒロインは転校生のZihuaという美少女です。純朴な少女とミステリアスな転校生という組み合わせは、王道ともいえますね。

Zihuaはとても美人ですが、冷たい印象を与えるためか友人は少ないよう。そんな彼女の心をJisuoが開かせていくストーリーとなっています。ゲームは2人の視点を交互に描く形式になっており、互いの心情が巧みに描かれていきます。クライマックスは演劇のシーンがあり、ロミオとジュリエットが演目。このあたりもなんとなく王道という感じがしますね。

ストーリー終盤にて2人は明確に恋人となるものの、直後に急展開あり。Zihuaとその家族に関する重大な秘密が明かされていきます。そしてそれは、Jisuoにとっても決して無関係ではないようです。最後に起こる出来事は、第2作以降への引きとなっています。

Melancholy Love

シリーズ2作目。前作から約10年後の学園を舞台にしており、キャラクターの多くは入れ替わっています。前作で学生だったキャラが教師役で登場し、今作の主人公を助けてくれるというクロスオーバーもあり。

主人公は、不良と恐れられるMianxueと、優等生な委員長のQianxunです。一見王道の不良×優等生なカップリングですが、Qianxunは意外とアグレッシブ。彼女がMianxueのことを好きなのは(少なくともプレイヤーには)明らかで、様々な策略を用いてMianxueと仲良くなろうとします。勉強を教えてあげるという名目で2人きりになる等、自分の立場を活かした戦略がみどころ。

一方、Mianxueは単純な性格のためか、Qianxunにいいようにされてしまっている印象。ですが、Qianxunの策略が予想以上に上手くいったことで「策士策に溺れる」な展開になったりも……?王道のようでいて、日本のゲームでもあまり見ないユニークなシナリオとなっています。

なお1作目同様に中国語がベースですが、1作目より先に本作の英語版がリリースされています。本作から入ったプレイヤーにやや混乱を招いた部分もあったり。とはいえ、1作ごとにキャラもストーリーもほぼ独立しているので本作から入っても大きな問題はありません。

ちなみに、1作目と比べて中国らしい要素がやや薄まっています。中国の地名や中華料理への言及があまりありません。登場人物の名前や言語以外では、舞台を特定できる要素がほとんどないように感じるほど。このあたりは中国のグローバル化を表現したものなのか、あるいは日本の百合作品をオマージュをより徹底した結果なのか。いずれにせよ結果的に、日本人にとってより親しみやすい作風になったように思います。

スピンオフ 

「Melancholy Love」の番外編として、「夜永 Eternal Love」「秘密舞会」の2作がリリースされています。「Melancholy Love」本編のキャラもサブキャラとして登場。また、きちんとフルボイスになっています。

ただし2022年2月現在中国語にしか対応しておらず、ハードルはやや高いです。少なくとも英語版がリリースされることを期待。

なお「夜永 Eternal Love」のほうは登場人物がイギリス出身という設定らしく多少英語の会話が混ざります。そのおかげで英語がわかればなんとなくストーリーが把握できるかも……?